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地球温暖化対策推進のための国内対策に関する提言

平成30年11月27日

 

一般社団法人 低炭素社会創出促進協会

代表理事 吉澤 保幸

 

地球温暖化対策の推進と持続可能な社会の達成

 10月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃目標特別報告書では、地球温暖化が現在のペースで進めば2030年から2050年の間に1.5℃の上昇に達する可能性が高いことが明らかになる等、一層の地球温暖化対策が求められています。そして、本年12月の気候変動枠組条約第24回締約国会議では、パリ協定の実施に向けての実施指針の合意や、各国の削減目標(NDC)の向上のためにタラノア対話が行われます。また国連持続可能な開発目標の実施も本格化し、持続可能な社会に向けて国際社会は動き出しています。
 我が国でも、パリ協定で求められる温暖化対策の長期戦略の検討や気候変動適応法による適応対策も進められており、引き続き国際的な議論をリードしていく役割が期待される一方で、持続可能な社会の達成に向けてSDGs(持続可能な開発目標)アクションプラン2018等に沿って国内対策を着実に進めていくことが求められています。

 

国内での地球温暖化対策の推進

 我が国の温室効果ガス排出量は、2013年度比で7.3%となる等最近やや減少の傾向が見られるものの、2030年目標、さらには2050年の80%削減目標の達成には、第5次環境基本計画で指摘されているように、長期的な視点からの対策が必要です。すなわち、環境・経済・文化の統合による地域循環共生圏の形成によって地域づくりを進め、地球温暖化と人口減少・少子高齢化、地方活性化等の問題とを同時に解決していくような脱炭素で持続可能な経済社会を構築していくことが必要です。このような経済社会は、当協会が目指す、地域から、「もの・拡大の経済」から「心豊かな暮らし」への転換を図り、人と自然がつながり、生命の輝きを実感できる新たな「環境・生命文明社会」であると言えます。
 脱炭素で持続可能な経済社会の実現のためには、経済社会システム、ライフスタイルの面でイノベーションを創出していくとともに、それを支える技術の開発と、特に技術やノウハウの徹底的な普及が重要です。このためには、当協会が執行しているエネルギー特別会計による補助事業も含めて、関係者の連携の下であらゆる政策を動員していくことが重要となっています。

 

国内での地球温暖化対策の推進に向けての提言と当協会の取組

 当協会は、脱炭素の社会経済達成のために環境省や関係機関との連携を密にし、適切な補助事業の執行や検証・評価業務による効果的、効率的な補助事業への提案等を引き続き実施して参りますが、特に脱炭素で持続可能で社会実現のための技術やノウハウの普及の観点から以下のとおり提言します。

 

1.持続可能な地域づくりの一環として脱炭素社会への取り組みを推進するため、行政、事業者、住民、
 NGO、地域金融機関、といったステークホルダーが連携し、地域が一体となって技術と新たなライフ
 スタイルの構築・普及を進め、地域循環共生圏の創出を図ること。

 持続可能な脱炭素社会に向けて地域循環共生圏の創出、自然ストックの再生のための活動及び脱炭素型のライフスタイルへの転換等が必要となっています。この実現のためには再生可能エネルギーや省エネルギー技術等の普及を地域の関係者が、連携を密にして地域に根差した取り組みとしていく必要があります。

 

2.経済社会のイノベーションを促すために、関係者に対し適切な支援を行うこと。その際、補助金等の
 分野でも持続可能な脱炭素社会の達成という長期的視点に立った目標とそれに向けた戦略的、計画的な
 行動を進めること。

 持続可能な脱炭素社会づくりに向けてイノベーションを起こしていくためには、目標を明確にしたうえで、戦略的、計画的に支援を行い、事業者等が信頼できる長期的な見通しを持って行動できるようにすること、特に、温暖化対策はコストではなく、今や競争力の源泉、更には新たな文明社会構築への速やかな移行への調整手段であることを事業者等が理解して行動できるようにすることが重要です。
 たとえば、補助事業の執行面では、補助事業者に対する適切な情報伝達ルートやメディアを通じた、コスト等の情報提供、検証・評価を含め補助事業の結果からフィードバックを受けて、補助事業の中の特筆事例の発信による普及・啓発や関係者のニーズにより適合した制度・運用としていくことが重要です。

 

3.「お金の流れを変えることで未来を変える」というメッセージと共にESG投資等の新たな金融行動の
 推進とそれを促す経済的シグナルとしてのカーボンプライシングの速やかな導入について、地域の企業、
 自治体や地域金融機関へ普及啓発していくこと。

 気候変動に対するグローバルな適応の実践として、世界規模でESG(環境、社会、ガバナンス)投資の急速な拡大等の金融変革のうねりが表出しています。また、排出量取引やいわゆる炭素税のようなカーボンプライシング施策が世界的に活用されており、地域レベルでもESG地域金融の展開やSDGs目標の実現が期待されています。地域企業の経営者や地域住民がESG経営(=CSV(共有価値の創造)経営)やSDGs目標の達成の意義・重要性に係る認識を深め、自治体や地域金融機関との連携により地域全体の脱炭素化と地域循環共生圏の創出に向けて行動するように、たとえば、補助事業者に対する事業説明や執行・事業評価調査において、環境省の第5次環境基本計画の趣旨や環境金融政策展開を紹介すること等により普及・啓発に注力していくことが重要です。