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地球温暖化対策のための長期低炭素戦略に関する提言

平成28年11月24日

 

一般社団法人 低炭素社会創出促進協会

代表理事 吉澤 保幸

 

パリ協定と長期低炭素戦略

 2015年の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においては、歴史的なパリ協定が合意されました。長期的に世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃を十分下回る水準に抑制し、さらに1.5℃までに抑えるように努力することを目的として、今世紀後半には排出量と吸収量の均衡を図り、温室効果ガスの増加を実質ゼロとすることとなりました。明確に、国際社会は、低炭素から更に脱炭素への道を歩み始めました。全ての締約国は中期の達成目標を定め、その達成に向けて国内措置を実施することに加え、次の目標を2020年までに提出すること、さらに長期的な脱炭素型の発展のための戦略を作成することとなりました。また、自治体や企業等の利害関係者についても削減努力を強化し、気候変動に対する強靱性を持ち、地域レベルや国際レベルの協力を進めることが要請されています。そして、今月開催されたCOP22(モロッコ マラケシュ)、パリ協定第1回締約国会合は、パリ協定の実施指針等を2018年までに策定することが合意されました。
 この間、我が国は、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減することを目標とし、さらに2050年までに80%の温室効果削減の排出削減を目指す、地球温暖化対策計画の策定等を経てパリ協定を受諾しました。京都議定書を始め国際的な対策の推進に寄与してきた我が国としても、引き続き国際的な議論に貢献し、更にはそれをリードしていく役割が期待されます。

 

国内温暖化対策の推進と当協会の取組

 地球温暖化対策行動計画の2030年目標は、徹底した省エネルギーの実施と再生可能エネルギーの導入を見込んだものであり、その達成には相当の努力が必要です。さらに2050年の80%削減目標の達成に向けて、現在、中央環境審議会等による長期目標の達成戦略の検討が進められているところですが、これらや地球温暖化への適応策を踏まえて、今後策定が予定されている第5次環境基本計画において地球温暖化対策を位置づけて、全ての利害関係者を巻き込んでの取り組みを進める必要があります。
 2030年やそれ以降の長期目標の達成には環境省の気候変動長期戦略懇談会が指摘しているような社会構造のイノベーションによって、地球温暖化と人口減少・少子高齢化、地方活性化等の問題とを同時に解決していくような取り組みが必要です。これは、当協会が目指す、地域から、「もの・拡大の経済」から「心豊かな暮らし」への転換を図り、人と自然がつながり、生命の輝きを実感できる新たな「環境・生命文明社会」の実現とも共通するものです。このような視点で長期戦略と長期ビジョンに合致する喫緊の施策に果断に取り組んでいくことが重要と考えます。
 特に人口減少と少子高齢化が同時に進む地方においては、低炭素化政策等を通じて地域資源と資金の地域内循環を進め、結果として様々な雇用の創出などにより地域の活性化や自立を図る取り組み等を、地域自身が長期的な視点を持って主体的に実施していくことが求められます。当協会では、このような取り組みへの助成を積極的に展開すると共に、地域自治体や諸団体、地域金融機関等への様々な支援や助言も積極的に着手しています。
 また、環境省が提唱している「つなげよう、支えよう森里川海」プロジェクトは、「環境・生命文明社会」の構築に欠かせぬ我が国が世界をリードしうる、国民運動を全国各地で幅広く展開していく極めて有効なアプローチであると考えます。森里川海を豊かに保ち、その恵みを引き出し、それを持続的に享受できる未来世代に及ぶ新たなライフスタイルの実現を通じて、長期的な温暖化対策としての大きな成果が期待されます。我が国のこのような先進的モデルは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や世界の温暖化対策の推進にも貢献していくことが期待されます。

 

 以上のような今日的課題の喫緊性を強く認識し、当協会としては、環境省や関係機関との連携を今まで以上に密にし、地域における温暖化対策の取組推進のための窓口として、地域循環社会の形成や自然ストックの再生のための活動等の支援や、低炭素型のライフスタイルへの転換に向けての働きかけを一段と強化して参ります。同時に、先進事例等を適切に広報・啓発し、他地域での同様な取り組みを促していきたいと考えます。
 また一方で、補助事業者等の現場ニーズや要望を環境省・関係府省等の政策決定者に伝えるコミュニケーションのファシリテーターとしても役割を果たしていく所存です。特に、社会構造のイノベーションを促すためには、補助金等の分野でも長期的視点に立った目標とそれに向けた戦略的、計画的な行動が必要であり、当協会としてもそのための調査研究や関係者への働きかけに努めて参ります。
 なお、補助金等執行に当たってはプロセスの透明性の確保と適切な業務執行に一層努力し、さらに、補助事業の成果の適正な検証・評価にも努めて参ります。